第58回:AI支援コードエディタ最前線 ― VSCode公式とVSCodeフォーク、新世代エディタの現状比較

AI-powered code editors: VS Code and its forks

はじめに:エディタ選びが「AI選び」になった時代

ここ数年で、コードエディタは「テキストを編集するツール」から、 AIと一緒に開発するためのフロントエンドへと劇的に変わりました。 特に2023〜2025年にかけては、VSCode公式+GitHub Copilotだけでなく、 VSCodeフォークや新世代エディタが次々と登場し、 「どれをメインで使うべきか?」という悩みを抱える開発者も多いのではないでしょうか。:contentReference[oaicite:0]{index=0}

今回は、AI支援コードエディタの代表格として、

を取り上げ、それぞれの特徴・制約・実用性・自由度を整理します。 最後に、「どんな人がどれを選ぶと幸せか?」という視点でまとめてみます。

1. 主要プレイヤーの整理

まずは登場人物をざっくり整理しておきます。

どれも「AIでコーディングを楽にする」ことを目指していますが、 目指す方向性や思想がかなり違います。

2. Google Antigravity:エージェントファーストIDE

Google Antigravity は、VSCode OSSをベースにした 「エージェントが主役」の開発環境です。

イメージとしては、 「とても優秀な新人エンジニアが1人いて、その人の成果物をレビューする」 という感覚に近いワークフローです。

ただし、Antigravityにはいくつかの前提・制約もあります。

現時点では「本番用IDE」というより、 未来のエージェント型開発を先取り体験するための実験的環境 という位置づけで捉えるのが良さそうです。

3. Cursor:VSCodeフォーク最強クラスのAI統合

Cursorは、VSCode OSSをフォークして AI機能を最初から深く統合したエディタです。 「VSCodeにCopilotを入れた」レベルを超えて、 ワークフロー全体をAI前提で作り直しているのが特徴です。

3-1. コード選択に対するインライン編集

代表的な機能が、 選択範囲に対してダイレクトに編集提案を行うショートカットです。

「手を動かす手前までをAIがやってくれる」感覚で、 局所的なリファクタやコメント生成が非常にスムーズです。

3-2. プロジェクト全体をまたぐ提案

Cursorの真骨頂は、 プロジェクト全体をコンテキストにした大規模編集です。

各ファイルごとに「Apply / 無視」を選べるため、 プロジェクト規模のリファクタリングをAIとペアで進める といった使い方が可能です。

3-3. モデルと料金

Cursorは、登場当初から GPT-4やClaudeなど高性能モデルを前提とした設計です。

「初めてソフトウェアに課金した」という声もあるほど、 生産性向上のインパクトは大きいツールです。

3-4. フォークゆえの制約

一方でCursorはVSCodeフォークであるがゆえの課題も抱えています。

「VSCodeの完全互換」ではなく、 AI統合を優先する代わりに多少の互換性リスクを受け入れるエディタ と理解しておくのが良いでしょう。

4. Zed:高速・オープン・マルチAIな新世代エディタ

Zedは、VSCodeとは無関係にゼロからRustで開発されたコードエディタです。

4-1. ZedのAI機能

ZedもAIを強く意識した設計になっています。

4-2. モデル接続の自由度

Zed最大の特徴は、AIモデル選択の自由度です。

クラウドもローカルも好きな組み合わせで使えるため、 「コードを外部クラウドに送りたくない」 ケースや、 カスタム微調整モデルを使いたいシーンにも向いています。

4-3. エコシステムと学習コスト

デメリットとしては、

とはいえ、LSP経由で主要言語はカバーされており、 プラグインエコシステムも急速に育っている段階です。 「オープンで軽いIDEが好きな人」にはかなり魅力的な選択肢です。

5. Windsurf(旧Codeium):無料で使えるAI IDE

Windsurfは、もともと「無料のAI補完プラグイン」として知られたCodeiumが、 VSCodeフォークIDEとして進化したものです。

5-1. Cascadeの特徴

Cascadeは、単なるQ&Aチャットにとどまらず、 プロジェクト全体のコンテキストを理解して提案します。

5-2. MCP連携と「開発フローごと理解するAI」

Cascadeは、Model Context Protocol(MCP)という仕組みで、 GitHub PRやSlackスレッド、Jiraチケット、Notionドキュメントなど 外部ツールの情報も統合する構想を持っています。

将来的には、「コードだけでなく、議論の経緯や仕様まで把握したAIチームメイト」 を目指していると言ってよいでしょう。

5-3. 何と言っても「ほぼ無料」

Windsurf最大の魅力は、 個人利用なら実質無料で、利用回数制限もほぼ無い点です。

モデル品質はCopilot(GPT-4)と比べると若干劣る場面もありますが、 日常的なコーディング支援では十分実用的で、 「とりあえずAIコーディングを試したい」人には最適な入口になっています。

デメリットは、VSCodeフォークであるため Microsoft公式マーケットを直接使えないこと。 ただし人気拡張の多くはOpen VSXにもあり、 日常利用ではさほど困らないケースも多いでしょう。

6. VSCode公式 + GitHub Copilot:総合力トップの本命

各種フォークや新興エディタが乱立するなかでも、 「VSCode公式 + GitHub Copilot」は依然として 総合力で頭一つ抜けています。

6-1. 機能統合のスピード

MicrosoftはVSCodeそのものにAI機能をどんどん統合しています。

将来的には、「VSCode=AI IDE」が ほぼデフォルトになる流れです。

6-2. エコシステムと囲い込み戦略

VSCode公式の強みは、拡張マーケットや各種サービスを含む 巨大なエコシステムにあります。

一方で、VSCode上では他社AI拡張も動作可能であり、 「プラットフォームは自社で握りつつ、その上では競争を許す」 というバランスを取っています。

6-3. Enterprise市場での強さ

企業向けという観点では、Copilotは コンプライアンスや監査機能を整えたEnterpriseプランを提供しており、 セキュリティ要件の厳しい業界でも採用が進んでいます。

対して、CursorやWindsurf、Antigravityは どちらかというと個人〜スタートアップ寄りで、 大企業で全面採用するにはまだ検証が必要な段階です。

7. 「実用性」と「自由度」の観点で比較する

ここまでの内容を、ざっくり2軸で整理してみます。

7-1. 実用性(生産性・安定性)

7-2. 自由度(コスト・モデル選択・ロックインの少なさ)

8. シナリオ別のおすすめ

最後に、「どう選ぶか?」をシナリオ別にまとめてみます。

おわりに:VSCodeを軸にしつつ、他もどんどん試していく時代

現時点での結論としては、 「VSCode公式 + Copilot」を軸にしつつ、目的に応じて他ツールを併用する というスタイルが現実的だと感じています。

例えば、

といった使い分けです。

1〜2年前には存在しなかった機能が、今では当たり前のように使えるようになっています。 これからもしばらくは、「エディタ戦国時代」が続くはずです。 ぜひ、年に一度くらいは自分の開発環境を振り返り、 新しいAIエディタやフォークも積極的に試してみてください。 そのプロセス自体が、開発者としてのアップデートにつながるはずです。

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