GitHub Copilot「Planモード」の詳細調査と競合比較
2025年10月29日(日本時間)発表のPlanモードは、AIが実装前の仕様作成・計画立案を支援する新機能。Ask/Edit/Agentと棲み分けながら、「コードを書く前に設計を固める」という開発プロセスの転換を後押しします。
要点サマリー
・Planモード=実装前の仕様化・段取り化をAIが支援。
・曖昧な要件をAIが問い直し、Markdownプランに落とし込む。
・VS Code(Insiders)先行・Visual Studioにも「Planning」プレビュー。
・Ask/Edit/Agentとの違いを明確化し、安全で予測可能なAI活用を実現。
・競合(CodeWhisperer/Google Duet/Tabnine/Cody/Codeium)と比較し、上流支援で一歩先行。
1. 登場背景とコンセプト
「コードを書きながら仕様を詰める」従来の進め方では、大規模開発や複雑要件の案件で手戻りが増えがちでした。Planモードはまず仕様を文章化し、実装手順を段取りしてから実行へ進む発想です。AIの提案を事前レビューできるため、透明性・予測可能性が向上。大規模変更での「意図しない改変」リスクを抑えます。
2. 何ができる?(機能とワークフロー)
- 仕様策定支援:要件を入力→既存コードベースを解析→
plan.mdに実装ステップを出力。
- 不明点の対話解消:仕様の曖昧さをAIが質問。回答を反映しプランを再生成。
- 実行と進捗:プランは段階実行可。各ステップの編集・検証・結果を記録。
- 編集の自由:プランはMarkdownなので、人間が修正→再実行が容易。
使い方(VS Code/Visual Studio)
・VS Code:InsidersでPlanモードを有効化→Copilot Chatでモードを「Plan」に。
・Visual Studio:Copilot「Planning」プレビューを有効化して利用。
・出力は plan.md(エディタで開く/進捗が可視化)。
3. Ask / Edit / Agent との違い
| モード | 役割 | 得意領域 | 弱み/注意点 |
| Ask | Q&A/説明 | 疑問解消・サンプル提示 | 計画立案までは踏み込まない |
| Edit | 選択範囲の編集 | リファクタ/部分修正 | 既存コード前提。新規設計は対象外 |
| Agent | 自律実行 | 複数ファイル横断の自動編集 | 計画フェーズ不在→意図ずれの懸念 |
| Plan | 実装前の仕様策定 | 曖昧要件の穴埋め/段取り作成 | プレビュー段階・要人間レビュー |
4. 対応エディタ/IDEと提供状況
現時点ではVS Code(Insiders)が本命。Visual Studio 2022にも「Planning」機能がプレビュー導入。JetBrains/Neovim等はCopilot自体の対応は広いものの、Planの正式提供は順次拡大という段階です。
5. チーム開発への適用(プラン共有の勘所)
- ドキュメント化:
plan.mdをリポジトリに追加すれば仕様の合意形成に有効。
- レビュー導線:PRテンプレート等に計画要約を流し込み、事前レビューを標準化。
- オンボーディング:AIとのQ&A履歴が設計議論ログとなり、新メンバー教育に活用。
6. セキュリティ/プライバシーと運用上の注意
- 企業利用:Copilot for Business等では「ユーザコードを学習に使わない」ポリシー。監査ログ・許可リスト等のガバナンス機能が強化中。
- プロジェクト外送信の最小化:機密要件が厳しい場合は、扱うコード範囲の制御/マスキング/社内規程の整備を。
- 著作権・ライセンス:AI出力のレビュー徹底。必要に応じ出典明示や代替実装に差し替え。
7. 価格とプラン(概観)
- 個人:Free / Pro($10/月)/ Pro+($39/月相当)。Planは追加料金なし。
- 企業:Copilot for Business($19/人・月)等。データ保護・組織管理が付帯。
8. 主要競合との比較(強み・弱み)
| ツール | 強み | 弱み | 一言まとめ |
| Copilot + Plan | 上流の計画立案をAIが支援/VS Code統合/多モード連携 | Planはプレビュー段階/IDE対応は順次 | 設計→実装を通貫する新潮流 |
| AWS CodeWhisperer | AWS APIコードに強い/個人は無料/セキュリティスキャン | 仕様書的出力は非対応/英語前提 | クラウド実装の即戦力 |
| Google Duet (Codey) | GCP統合/高品質補完/多言語強め | Plan相当なし/対応範囲は拡張中 | GCP開発の相棒 |
| Tabnine | 軽快・オンプレ/ライセンス配慮 | 大規模設計は苦手 | セキュリティ最優先なら |
| Sourcegraph Cody | 巨大Repo横断の文脈理解/企業機能が豊富 | 導入ハードル(Sourcegraph連携) | 「組織の頭脳」型AI |
| Codeium | 無料で実用/軽快UI | 高度仕様生成なし/大規模文脈は限定 | コスパ重視の代替 |
9. 実務導入チェックリスト(最短ルート)
- 対象選定:仕様の曖昧さが多い/影響範囲が広い機能を一本選ぶ。
- 環境準備:VS Code Insiders+Copilot Chat(Plan有効)。
- プロンプト:要件・非機能・制約・既存設計・テスト観点を箇条書き投入。
- プラン整形:出力
plan.mdを人間がレビュー・修正。
- 段階実行:ステップごとに実行→ユニットテスト/型チェック/CIで検証。
- 成果の残し方:PRに計画要約を添付、
docs/配下に保存して共有。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. Planモードは日本語で使える?
日本語プロンプトでも動作します。ただし技術語は英語のほうが精度が上がる場面があります。要件は日本語+英語キーワード併記が無難です。
Q2. 既存のAgent/Ask/Editは不要になる?
用途が違います。Planで仕様を固め、Agentで実行、Askで詳細調査、Editで局所リライト——併用が最適解です。
Q3. チームで同じプランを使える?
plan.mdをリポジトリ管理すれば共有できます。PRレビューや設計レビューに組み込むと効果的。
Q4. 競合との住み分けは?
AWS/GCPに深く統合したいならそれぞれの純正AI、上流設計から通しでAI活用したいならCopilot+Planが優位です。
結論:Planモードは、AIコーディングを「実装中心」から「設計起点」へ引き上げる。
プレビュー段階ゆえ人間レビューは必須ですが、手戻り削減と透明性向上の効果は大きい。小さく試し、成功パターンをテンプレ化して横展開しましょう。